ひろせき電鉄1120形電車

ひろせき電鉄1120形電車(ひろせきでんてつ1110がたでんしゃ)は地底湖線が開通した2022年4月5日より営業運転開始した支線区用通勤型電車である。

導入に至るまで

2022年4月5日に開業する琴海-簗ヶ浦間と直通する高原線、簗ヶ浦海浜交通線に使用するために製造されることになった600V特殊狭軌専用車両である。そのため、高原線の琴海以東には入線できない。
当初は近鉄内部線などから中古車両を購入する予定であったが、直通先の高原線や簗ヶ浦海浜交通線が中古車両を多数所有しているため、故障時のメンテナンスを容易にするために地底湖線の車両は大半を新型車両で占める形とした。また、すでに製造された1110形や制御更新が行われていた1300形や2210形といった特殊狭軌対応車両との部品共通化を図るためにも中古車両を大規模改造し、10年程度延命使用して廃車にするよりは新型車両を長く使い続ける方が費用も掛からず、星野グループの車両製造メーカーである彩葉新工機で製造できるという利点があったためである。

デザイン

地底湖線開通と同時に運行する元近鉄サ120形を改造した1200形や動態保存目的として運行する220形とデザインに差が出ないため、今となっては全世界でも非常に珍しい軽便鉄道の新線開業ということで往時の軽便鉄道を現代風にアレンジするとという発想からいろいろなデザインが考案され、最終的にマッチ箱のように角ばった車両ではあるものの窓ガラスや灯具類に曲線を用いることによって柔らかいイメージとした。また、片運転台、両運転台の両方に対応でき、いくらでも自由に手を加えられる自由形としている。

車体

車体は他の軽便車両と合わせて12mの一般的な軽便鉄道車両である。車体は台枠と内張りをステンレス、外板を加工可能なヴェンデジウム製とし、鉄道車両では史上初の構造となった。ヴェンデジウムが採用されたのは地底湖線内において土砂崩れ、地底湖トンネル内において放射性物質(Phazon)が流出し、構造物が溶解した時に客室内に閉じ込められた乗客や乗務員を生き埋めから防ぐために最強硬度を誇る車体として設計することになった。そのため、曲線加工ができず、前面切妻、屋根はフラットの直方体となっている。
ただし、2023年に増備された1127号はヴェンデジウムは費用が掛かる、加工が困難、製造に時間が掛かるという難点から外板はアルミ製とした。
1121,1122は両運転台仕様で前面に貫通扉を設置、1123+1124,1125+1126は片運転台で2両編成を組み、先頭部は非貫通である。1M方式のため、中間に両運転台車を組み込める形となっている。また、通り抜けできないものの1220形などと増結することもできる。
車体は無塗装車体であり、ヴェンデジウムは塗装してもすぐに剥がれてしまう特性があるため、ラッピング(シール)による塗装が行われている。アイボリーをベースに客用扉部分を茜色、扉脇の客用窓の下には地底湖線ラインカラーであるオレンジと高原線のラインカラーであるグリーンのツートンカラーの帯を3列配置し、一番上の帯上には「Hiroseki Electric Railway Chiteiko-line」のロゴが配されている。
両運転台車は貫通扉と左右に窓があるが片運転台車は3分割された一体窓で構成され、両者の外観に大きな変化はない。
乗務員扉は両運転台、片運転台車共に進行方向左側のみ設置された。ただし、1227号車は小窓が追加されている。客用扉は片開き式のものを左右に2ヶ所、中央に2段式の固定窓が5枚(反対側は4枚)並ぶ。4枚側の窓が無い部分には車いすスペースを設置。ただし、1127号車のみ大型3枚と左右両端に小型の窓を2枚配置し、車いすスペースは設置されていない。

室内

座席は2つの客用扉の間に1列シートが左右に11列と9列の計20席。それ以外は車いすスペースと片運転台車のみ立ち席スペースもしくは冷房装置が設置されている。
冷房装置は片運転台車のうち1224,1226、1227号車に設置。1223,1225は立ち席スペースとなっている。
1227号車を除き、ワンマン運転に対応し、乗降扉は主要駅を除き、先頭車の前扉を出口、2両目の後扉(単行運転の場合は後扉)を入口とし、それ以外の扉は開かないようにしている。なお、ラッシュ時間帯で3両以上での運転の場合は車掌も乗務しているため、2両目と3両目の後扉も開閉する。
運転台後部には液晶ディスプレイ式の運賃表も設置されている。

運転台

運転台は両運転台車は左端、片運転台車は中央に設置。
マスコン、ブレーキはワンハンドルマスコンを採用、後部には運賃箱を設置、メーターパネル脇の緊急ボタンを押すと非常ブレーキ、パンタグラフ下降乗降扉のロック解除が同時に作動し、非常時の緊急対策も備えている。

主要機器

軽便専用車両としては初めてVVVFインバータ制御を採用。1110形などで使用されている全密閉自冷式のIGBT-VVVFインバータ制御を軽便鉄道向けに彩葉電機が自社開発した。駆動装置は中空軸平行カルダン駆動方式を採用。台車は標準軌用のTS1026を軽便鉄道向けに開発された小型のTS1026Nで、サイズはTS1026を約5分の3程度縮められている。勾配対応のディスクブレーキも搭載している。

営業運転開始まで

2021年8月下旬より製造が開始され、1両が完成するまで2か月以上を要し、同時進行で3両ずつ制作されていた。11月には両運転台仕様の1121,1122が落成し、トレーラー輸送で大和田検車区へ搬入された。搬入時は無塗装状態で、試運転までにラッピングが施されている。そして翌年1月に1123以降4両が次々と大和田検車区へ搬入され、同時期には琴海駅まで機関車で牽引され、地底湖線・簗ヶ浦海浜交通線内において試運転が始まり、2022年4月5日より華々しく営業運転を開始した。

1127号車

2023年6月に導入された元三岐鉄道北勢線の1200形の連結相手として追加製造されることになったのが1127号車である。
なお、車体はコストと製造時間が掛かるヴェンデジウム車体からアルミ車体に変更され、塗装もラッピングから塗料による塗装となった。
前面はマイナーチェンジが施され、上部の行先表示LEDの両脇に前照灯、裾部に曲線を描いた横長の種別灯が左右に配された形状となり、窓は2枚窓、運転台も中央から左側に寄せられた。
さらに連結相手の1200形が3両のT車であるため、電動機の出力も増強することになった。そのため、他の車両との増結は不可能となった。
塗装は1200形に合わせ、客用扉の茜色はマルーン、裾部にオレンジとグリーンのツートンカラーを配したものになっている。
基本的に1200形と固定で運用されて運行している。

問題点と今後の動向

登場から2年以上経過した現在、軽便鉄道としては久々に登場した画期的な新型車両で、技術面においては様々な賞を受賞した車両でもある。
しかし、最新技術を詰め込んだが故の問題点も発生し、車体面ではヴェンデジウムが外板のみ採用とはいえ、強硬度を誇っているだけでなく、非常に重みがあるため、軌道加速力が遅く、地底湖トンネル内の勾配区間においては空転が発生してしまうケースが多かったが、時間にルーズな通勤路線ではないことからこの問題は見送られている。

また、両運転台車においては閑散とした日中の単行運転で活用できるものの、乗務員側では非常に扱いづらく、わずか1m程度しかない車両の幅のうち、半分近くが貫通路やその設備によって占められ、運転席は約30cm程度しかないという極狭小な造りとなっているため、不評となっている。さらに乗務員扉が片側しかないことから、反対側のホームの視認が難しく、安全確認が取れないということから2023年より車外カメラを各車両に設置し、運転台にモニターが追設されたが、長編成時の安全確認が取れないことから、2024年度より大規模工事が施行されることになった。
片運転台車両については乗務員扉の追設工事が施工、出力も1127号車と同等のものに更新するという内容で行われる。
両運転台車両については運転台の使用休止に伴い、乗務員扉の追設は行われず、冷房装置が取り付けられ、片方に冷房装置、もう片方に電源装置が組み込まれ、中間車として転用されることになった。
両者ともに大規模工事が施行されることになり、ヴェンデジウム車体は改造費用、時間を要し、1両の改造に半年以上掛かるため車両が不足しがちになるケースが出てきてしまう。
そのため、当面の間は当初部品取りであった1220形のサハ1223が運用開始、簗ヶ浦車による代走2024年度より運行開始されたミニSL列車やメリーベル号を平日も運行される見通しとなっている。
また更新される際には各車両がパステルカラーに変更される予定である。

  • 最終更新:2011-08-14 19:23:19

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